Mar 04,2017
原宿で行われた合同展示会で若手デザイナーが様々な服を展示している中、フライパンとコックコートを展示していた“FRYINGPAN OWNER(フライパンオーナー)”のテリーヌハシモト氏。編集部の人間が「フライパンですか?」と尋ねると「僕、フライパンしか触ったこと無くて・・・」と良い具合に力の抜けた声で冗談を言う同氏。話を聞くと飲食店で働きながら服を作っていると。そんな同氏が気になり、後日インタビューさせてもらうため連絡を取ってみた。
インタビュー当日、呼び出されたのは麹町。皇居の西に位置したビジネス街にはスーツを着た「企業人」達。そんな中、日テレ通りから裏路地に入ったすぐのところにひっそりとたたずむ展示スペース「麹町画廊」。近づくとそこにデニムのエプロンを掛けたテリーヌ氏が笑顔で待っていてくれた。
たわいのない会話から始まった談笑の中で、飲みながら話しましょう。とおもむろに画廊の奥にあるキッチンから持ってきた銅のタンブラーにビールを注いでくれるテリーヌ氏。
その甘い言葉に乗り、注がれたビールを飲みながらブランドの立ち上がる経緯を聞いてみた・・・。
・・・・・・
TOKYO BASE 以下 T) 元々料理が先で服を作り始めたんですか
FRYINGPAN OWNER テリーヌハシモト 以下F)はじめは服飾の学校を出て鞄屋に勤めていたんですよ。そのあとに飲食店で勤め始めて、今また服を作り始めているという感じですね。
T)そもそも服飾に入ったきっかけって何だったんですか?
F)あー、やっぱモテたいなぁ・・・と思って(笑)
T)そうなんですね(笑)かなり重要でした?(笑)
F)そうですね。それが無いとウソになっちゃいますねー(笑)
何のためにお洒落するのかっていうところで“モテたい”をなくすとウソ・・・ですよね。
T)ブランドを立ち上げる前に料理の道に入ったのはなぜですか。
F)正直言うとそのときの流れでしたねー(笑)元々、兵庫県の豊岡市で「柳行李」を作ってる鞄メーカーに勤めてたんですけど、9割くらいのお客さんが東京だったので、東京に事務所を開くってことになって、で、兵庫県で1年間研修した後に東京に戻ってきたんですけど、誰もいなくて(笑)「お前一人でやって」って言われてやってたのが20歳くらいなんですけど、その後、急に中国に行ってきてって言われて。それで中国のチンタオにある生産工場に行って住み込みで生産管理してました。で、東京に帰ってきたんですけど、戻ってきた翌日に「兵庫に転勤になるけど良い?」ってなって、明日までに決めてくれってなった段階で「もう辞めよう」って思ったんですよね。それで元々料理が好きでよく作ってたので飲食店で働き始めました。
T)何料理のお店で?
F)最初はスペインバルで働き始めて、今はこの麹町画廊に併設されているキッチンでタコライスをランチで作って売ってます。
T)へぇー。画廊でタコライス売ってるんですか。
F)はい。ランチ時にOLさんたちが買っていってくれますよ(笑)
T)フライパンオーナーを立ち上げるきっかけはなんだったんですか。
F)25歳ころに料理人にフォーカスを当てたものを作りたいなって思い始めたのがきっかけですね。
T)初めのころはどんなものを作ってたんですか。
F)シルクスクリーンのプリントTシャツですね。一つ一つ手刷りなんで、インクの載り具合が違ったりするのが料理みたいなんですよ。
F)この、生ハムプロシュートバンダナもハムの刺しが柄になってるんですけど、かすれ具合とかが一つ一つ違くて。
T)その柄はプロシュートだったんですか?
F)そうです。プロシュートを並べるとすごく綺麗なんですよ。
T)確かに。そもそもなぜプロシュートを柄にしようって思ったんですか?
F)これも変な話ですけど、スペインバルで働いていてたときに嫌って程プロシュートを切ってたんですよ。もう、プロシュートの柄が脳裏に焼きつくくらい(笑)
T)それで(笑)頭から離れずそのまま柄に?
F)そうそう(笑)
T)フライパンオーナーのコンセプトはなんですか?
F)食と衣服を組み合わせて最高の一皿、プロダクトを作ろうっていうのがテーマですね。
だから、フライパンオーナーではデザイナーをシェフって言ってたりします。
T)ブランド名を付けるときに候補とかいくつもあったと思うんですけど、フライパンオーナーにしたのはなにか想いがあったんですか。
F)いくつか候補があった中で最終的に“フライパンオーナー”にするか“スモークスペース”にするかどっちにしようか迷ってたんですけど、朝方酒を飲みながら友達に話したら「断然、フライパンオーナーでしょ」って言われて「うん、そっか・・・」みたいな(笑)
T)プロダクトの中にフライパンがありますけど、なんでフライパンを作ろうとしたんですか?
F)フライパンオーナーは、実はキッチンブランドなんですよ。だから洋服だけではなく、キッチン用品も出していこうって思ってて。
T)そうだったんですね。
F)はい。表立ってキッチンブランドとは書いてなかったりするんですけど。
T)すべて鉄製にした理由とかあるんですか?
F)デザイン性もそうですけど、単純に鉄のフライパンで料理したときって、食材が活き活きしてるんですよね。フライパンを湯気が出るまで熱して食材を入れると踊るんですよ(笑)
T)そんな違いがでるんですね(笑)今度試してみたいです。
F)是非やってみってください(笑)
T)ブランドの立ち上げはテリーヌさん一人で?
F)一人ですね。ただ服を作るときはパタンナーさんに依頼してるんですよ。
T)じゃあ、ラフ画だけ渡して?
F)いや、ラフ画も書いてないですね(笑)パタンナーさんにイメージを伝えてパターンに起こしてもらって。だから自分ひとりでというよりたくさんの人に助けてもらってるんですよ。イメージを伝えるとここはこうした方がいいみたいな。だから、はじめのイメージは僕ですけど、形とかはみんなの意見が詰まったプロダクトなんですよね。
T)“料理人”というのがキーワードだと思うんですが、そこにフォーカスを当てたのはテリーヌさんが料理をやってた事のほかに何かありますか?
F)料理人ってかっこいいじゃないですか。だけどまだファッション性としての認知はあまり高くないと思っていて・・・。
―少し間を空けて自分のつくった商品を見ながらまた話し出すテリーヌ氏
F)よくストリート系ブランドでしょ?って聞かれるんですけど、そうではなくて、キッチンブランドとしてキッチンや店で着ていたものがそのままストリートに出て着られてるみたいな。たとえばベースボールシャツは元々メジャーリーガーが着ているものだったけど、そこからストリートでも着られていったように、将来、料理人以外の人がコックコートを街中で着て歩いていてもおかしくないじゃないですか。料理人が着ているものをかっこいいなって思ってくれる人が増えてストリートでも着られる。そうしたら、料理人にもっと目が向けられるんじゃないかと思って。
T)ブランドを立ち上げるまでに料理人を経たことで何か感じることがあったんですね。
F)うん。料理人がもっとかっこよくなれるんじゃないかな。っていうのはありますね。昔のコックコートももっと面白みがあっていいんじゃないかなって。
T)今後のこんなことをしていこうという展望は?
F)自分は運が良くてこうして麹町画廊でも料理を作る機会があるので、ここで出会うアーティストたちをフライパンオーナーのシェフとして招いて、アーティストが描いたデザイン、要は素材を活かしたアイテムをだしたいですね。
T)テリーヌさんが新しいものを作る環境としてはすごく良い場所なんですね。今日はお話いただいてありがとうございました。
F)もう一杯飲みしょう(笑)一期一会ですよ・・・・・。
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