COLLECTION

fill_the_bill_main

FILL THE BILL

物を作る側から想う“必要とされるもの”

Guest:Kaneda Junichi

T)どんなコンセプトで立ち上げたんですか?

K)着こなしは自由で、一個ずつちゃんと作ろうと思ってスタートしたのでLOOKがどうとか全く最初は考えてなかったんですよ。アイテムにフォーカスを当てて物作りをしっかりしたいので、コンセプトを考えた時にアイテムのクオリティー重視で、その物自体がよかったら着ても雰囲気出るし、そういう感覚を目指していました。

T)ブランド名“FILL THE BILL”という言葉の意味ってなんですか?

K)“ちょうどいい”とか、“必要とされる物”とかそういう意味ですね。でもやっぱり物作り側だったんで、価格も含め工場さんに対しても、みんなに対しても必要って意味です。お仕事としてもそういう存在じゃないと成り立たないじゃないですか。工場さんにとっても良い仕事じゃないと。面白かったり、ちゃんと利益も取れるとか(笑)まぁその工場側の目線もあったんで、じゃあ、あとお客さんにとっても必要な物じゃないといけないっていう意味合いがあって。

fill_the_bill_3

T)初期はしばらくデニムを作られてたんですか?

K)初期はスウェットとかワークシャツとか作ってましたね。もちろんメンズだけなんですが。15型くらいですかね。その時好きな物を作って。その当時ワークブームというかそういうブランドが多かったんですけど、それをモダンにというか、綺麗にというか。あんまり土臭くなく打ち出せたらなって作ってる途中から思ってきた感じでしたね。

T)やっぱりデニムにはこだわりが強いですか?

K)そうですね。やっぱり前に勤めていた会社もデニム系OEMでしたし、FILL THE BILLとして最初に絵型を書いて作った物もデニムだったんで、単純に好きなんだと思います。日本って凄いんですよね。凄い良い生地いっぱいあるんで、選びたい放題だと思います。(笑)デニムは岡山で。縫製工場もたまに行ったりしますね。でも、アメリカのデニムも使います。Cone Mills社(コーンミルズ社) っていう昔からLevi’sに提供している生地屋さんの物を使ってます。日本のデニムと、アメリカのデニムは色味が違うんですよね。日本のデニムは濃色というか結構濃いんですよ。アメリカのはすっきりしててブルーの色が綺麗で古着っぽい色、まぁLevi’sの色ですよね。日本のってちょっと黒ずんでるんですよ。だからアメリカのデニム生地で作った805と言うストレートフィットデニムは、そのダサい感じを出したくて、アメリカの生地を使用しました。センタープレスをいれて、みたいな(笑)。

T)個人的には日本のデニム、アメリカのデニムどちらが好きですか?

K)色はアメリカの色の方が好きですね。でも量産の事を考えると日本のデニムは最高ですね(笑)やっぱりブレが無いんですよね。アメリカだとかなりブレますね(笑)そこで結構苦労することはありますよ(笑)縮み具合が全然違うから。日本のデニムは本当に優秀で計算通り行くんですよね。デニムってサンフォライズド加工っていう縮み防縮の加工っていうのがあるんです、あとはスキューっていうねじれ防止と毛焼きとか。色々と行程があるんですけど、多分、防縮加工がアメリカのデニムはしっかりしていない。向こうの人は結構しっかりしてるって言ってるんですけど、やっぱり日本の技術が相当凄いですね。日本の技術はトップだと思います。

fill_the_bill_6

T)FILL THE BILLのアイテムを見ると、ミリタリーテイストが多いですよね。

K)そうですね、冬はいつもそうなっちゃいますね(笑)夏はまた全然違うんですけど・・・あ、夏もミリタリーテイストありますね。(笑)でもやっぱりそこは男なんで軍物の作りに1度はやられてますから、自然と出てくるんでしょうね。でもシーズンによって毎回1度はクローゼットから古着を引っ張りだして、この辺かな〜って(笑)感じながら進めて行きます。足りない物は古着屋さんに行って揃えます。そういえば、昨日も行ってきましたね(笑)そういうサンプルを持って工場や生地屋さんに行って、こういう生地作れますか?ってところから。ずっと古着屋巡りはやってますね・・・半分趣味ですかね(笑)これ欲しいなって。あー、欲しいってことは良いって事か!・・・みたいな(笑)

fill_the_bill_1

T)古着はどこでよく買ってたんですか?

K)中目黒はよく行きます。あとは高円寺にもよく行くんですけど、お世話になってるオジさんがいて…そこでよく買いますね。その人が面白い人なんですよ。(笑)ロスコーっていう店で、お店の家具とかその人から買ったりするんです。その人自体がマニアックなんで(笑)すごく良いお店で、僕的には1番好きなセレクトをしてくれてるんですよ。今度行ってみてください(笑)

T)ちょっと行ってきます(笑)FILL THE BILL MEACANTILEというお店はどういうテイストにしようというのはあるんですか?

K)NYみたいな入り交じってる文化が好きなんで、床のタイルも大理石なんですけどモザイクタイルにして、あとウッドを使って。NYに行くと古い建物なんですけど、商品はすごく洗練されたキレイな物が並べられてて、そのギャップがすごく好きなんです。古い物と新しい物のMIXです。横浜とかにもよくありますよ。横浜も古くから開港している都市なんでアメリカ文化が入って来てるじゃないですか。だからそこにある古い建物とかやっぱり建物が好きなんですよね。1900年代初頭の建物とか多いんで。美術館とか開港記念会館とかエントランスがこんな感じです。まあ、それを元にしてるんですけどね(笑)東京にも古い建物がいっぱいあるんですよね〜。日本橋の日銀とか三井本館なんか、めちゃくちゃかっこいいですよね。

 fill_the_bill_2

T)アメリカとかにも実際行かれるんですか?

K)行きますね。3分の1仕事3分の2遊びですかね。(笑)

T)3分の1なんですね(笑)NYが多いですか?

K)NYが多いですね。ボストンのフリーマーケットとかは、先程の高円寺のオジさんと一緒に行きました。大変なんですよ、1日中歩き回って重い物運んで。古着屋さんはホント尊敬します。でも楽しいんでしょね。宝探しが。それが凄く分かります。なので、マーケットリサーチなんてカッコイイ事はしていません。すいません…(笑)。だからデパート系はあんまり行かないんです。個店の方が好きなんでしょうね。

T)ファッションカルチャーでNYと日本の差は何か感じますか?

K)向こうでそういう仕事をした事ないんでわかんないんですけど、クオリティーは間違いなく日本なんだなって毎回行くと思いますね。日本のブランドはもっともっと売れそうだなって思っちゃいますね。クオリティーが違いますよ。抜群に日本がナンバー1だと思います。縫製とか生地とかっていうとみんな勝てるんじゃないかなって思いますね。服で言うと全然勝てると思います。あと、ビジネス感というか・・・向こうってビジネスがメインというか。日本のデザイナーさんは多分好きで作ってて、それが商売になっちゃったっていうのが多いと思うんですけど、向こうにも勿論そういうはあると思うんですけど、それよりももっとビジネス化してる感じがするしますねー。アメリカはビジネスに比重が大きいと思います。こだわりのポイントが多分違うんだと思いますけどね・・・たぶん(笑)それが服にも表れてるのか・・・。

T)FILL THE BILLの今後の展開は?

K)やり続ける事が一番の目的なので、ああしたいこうしたいというのはその都度できる事だと思うんです。とにかくやり続けることができればいいな。っていう些細な感じで(笑)大変さは実感してるので・・・。ちょっとずつ大きくなればいいなって思いますし、そんなに大それた・・・コレクションやりたいなとか・・・ちょっとは思ってますけど(笑)だけど、その大変さを凄い実感してるんで、なかなか。でもそういう事もやってみたいとは思いますけどね。

T)最後に、実は・・・の話が聞けてうれしかったです。今日は物作りから始まったブランドの面白い話ありがとうございました。
・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・

–ゆったりとした時間と空気が流れるFILL THE BILL MEACANTILE。居心地の良さに、つい甘えてしまいたくなるような空間に包まれながら、どこか温かみのある、そして時折客観的に、自分の洋服についての価値観を話してくれた金田さんに、また会いたい、また来たい。そう思わせてくれるような時間を堪能した・・・

Photographer: Yuya Mochizuki

  • Facebookでシェア