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DOWN ON THE CORNER

自分が触れて来たカルチャーを身に纏う

Guest:土井YACK康之

T.B)じゃあ “DOWN ON THE CORNER ”の大テーマって事ですね。

YACK)そうですね。そういうものって、本当に今でも日本で手に入らないんじゃないかな・・・。今なんか、なんでも昔に比べたら物はあるかも知れないけど、そういうなんか、、、ガーッンって来るような物とかっていうのは、難しいじゃないですか。その時はそこに行って買って来たものを並べるってだけで匂いムンムンで。本当にその匂いを嗅いだら、「あぁ、これちょっとアメリカの匂いだね、日本の匂いじゃないね、この商品」って革製品にしろ、アンティークにしろなんにしろ。だからそういう世界観を昇華したくてやったというのが“DOWN ON THE CORNER”かな。ちょっとかっこよく言い過ぎたけど(笑)

T.B)いやいやいや(笑)追求されてたんですね。

YACK)追求というか、思いっきりハマってたんですよね。どハマりして、これで食って行けるんじゃないかって勘違いをしたりなんかしてね。

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T.B)当時の “DOWN ON THE CORNER ”はYACKさんのアトリエみたいな感覚だったんですね。

YACK)そう、、、節操がないですよね。アメリカのニューヒッピーカルチャーみたいなのとかロックとか古臭いのが僕は好きだったんだけど、スケートボードとかのカルチャーはもちろんだし、周りにハイファッションしている様なブランドやってる人達もいるし、夜遊びに行けばパンクだなんだレゲエだ、CLUBだってハウスだなんだってめちゃくちゃあるじゃないですか。そういうのは全部、僕は遊びに行ってたんですよ。自分が好きなものには顔を出して触れて。だから、お店を表現すると自分が好きな色々な世界をごちゃ混ぜにしたようなお店だったな。だから普通にGAPのTシャツがあったりとか、アンティークの灰皿あったり、ギターあったり、自分の好きな音楽のCDを置いてみたりとか。ファッションというか、カルチャーショップという感覚だったんですよね。自分としては。

T.B)YACKさん的には最高の空間だったんですね。

YACK)最高ですよ。だからなんでみんなこれがわからないのかなって思ってたんですよね(笑)

T.B)お店は何年くらいやられてたんですか?

YACK) そこは5年しかできなかったんですけどね。2001年まで。

T.B)そこからは場所を移してやられてたんですか?

YACK)場所を移したというか、お店自体を閉めちゃったんですよね。ビジネスというかそういうのはいい結果出せなかったから、もうお店を閉めて、辞めよって事にして。

T.B)そこからはどうされたんですか?

YACK)そこからねぇ、原点に戻ってTシャツだけはシルクスクリーンで刷っていくのはやろうと思って。お店を閉めて、、、だいたい2年後くらいに始めるんですよね。お店を閉めてからは結構ちょっと迷っちゃってね、、、路頭に。どうしようかな、てね。なんかやりたい事なくなっちゃったなぁって。でもTシャツ作りたいって思って。普通にTシャツやってただけじゃ面白くないからって言って、ヘンプっていうの素材にその時凄いハマってたから、ヘンプのTシャツを作りたいって始めたのが“Joint Creation(ジョイントクリエーション)”。それは今でも細々やってるんですけど、自分のライフワークと言うか、“DOWN ON THE CORNER”とは別で。

T.B) ”Joint Creation “はシルクスクリーンをメインにやってるんですか?

YACK)ヘンプのウェアを作りたいっていうのでTシャツから始めたんだけど。だからファッションというよりか、、、カルチャーを身につけてるっていう感覚の方が強いというか。僕はファッションとか教えてくれた先輩が居るから、自分がそれと一緒に語るのはおこがましいし、自分は絶対違うし。だからそうなった時に、Tシャツとかにプリントするのは、ある意味メディアじゃないですか。着るメディアというか。そういうインパクトあるなとか。

T.B)洋服の上で自己表現してるってことですよね。

YACK)そうですね。だから今でも続いてるのはそこですよね。そこがやっぱり面白いから、Tシャツを作って。自分がやるんだったら、載せるキャンバスもひと癖あるものでやりたいなって思って。ヘンプで。

T.B)じゃあ “Joint Creation “とは別に “DOWN ON THE CORNER “を復活させたのはどういったきっかけだったんですか?

YACK)酒飲んでるときの話しなんですけどね(笑)結構ベロベロに飲んでる時に・・・。Joint Creationでソーズカンパニーさんに商品取引させてもらってたし、前ちゃん(ソーズカンパニー前田氏)とかBAMBOO SHOOTS(バンブーシュート)のスタッフの人とか飲んだりする仲なんですけど、前ちゃんが当時の ”DOWN ON THE CORNER “の物を持ってくるんですよ。20年くらい前の・・・。

T.B)じゃあ前田さんは当時の ”DOWN ON THE CORNER “のヘビーユーザーだったんですか?(笑)

YACK)もう、僕が忘れてるような物を持ってくるんですよ(笑)「こんなのありましたよ、持ってきました!」って言って(笑)見ると、、、うわぁ~ってタイムトリップするじゃないですか。ちょっとその記憶が。「凄いねぇ~」なんて(笑)ちょいちょいそういった物を持ってくるから「じゃあ、、、もうやるかぁ!作るか!」って言って。飲んでるときの話しですよ(笑)

T.B)でも嬉しいですよね。当時のお客さんが身近に居たんですもんね。

YACK)だから前ちゃんが言ってなかったらやってないですよね。自分の中じゃそれはもう過去の物だし、もう別に今更いいかって。でもなんだかんだ言ってそのときがあって、今がある訳だから。色んな人の縁とかも無駄にしてたのかなってある日ふと思って。結構そういうのを自分勝手に生きて来たから、過去があって今の自分がやれてるのに、それを全くなかった様に過ごしてるのも勿体ないなって。だからちょっと気持ちに余裕というか、そういう風に考えられるようになったというか。でもまぁね、飲んでるときの話しなんて、飲んでる時に終わっちゃうじゃないですか、普通。でもやっぱりね、、、飲んでる時に仕事の話しをするんです。だから飲んでないと調子悪いんです(笑)飲んでる時に出た話しを、現実シラフの時に何が出来るんだろうねって。そういう風に始まったから。

T.B)そうなんですね(笑)それはいつ頃の出来事なんですか?

YACK)最近だよね。2015SSからだから。

T.B)復活した”DOWN ON THE CORNER “の大テーマは当時のままなんですか?

YACK)当時のままではないですね。時代は違うから・・・。

ソーズカンパニー 前田)YACKさんのカルチャーを大事にして、今の要素もちょっと入れつつ新しくっていう感じですね。

T.B)2016年のテーマというのはあるんですか?

YACK)強いて言えば20周年。96年デビューで今年20年なんで、20年ぶりのというか、自分の中でそういったちょっとノスタルジーなのはあるかも知れないですけど。だから一回、現在地点を確認するというか “Back to Roots “みたいなのがコンセプトですかね。

T.B)アイテムをみると古着のテイストが感じられますね。

YACK)そうですね。今は時代が全然違うから完全にそういう風にはしてないけど、でも敢えて自分がやって来たノリを今だったらどういう風に出来るのかなってね。当時もね、結構アメリカ製のTシャツを染めてプリントしてたりしてたから、当時と同じやり方でやろうよみたいな感じで今回もしてますけね。ただ、やっぱり当時と同じ様にはできないですよね。

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T.B)こういったデザインはなにかサンプリングをしてるんですか?

YACK)Grateful Dead Movie(グレイトフルデッドムービー) の “Uncle Sam(アンクルサム) “っていうキャラクターで。

TB)めちゃくちゃ可愛いですね。

YACK)柄とかは当時の柄を使ってる。本当は今の柄をやりたいんだけど、自分的には一回その当時のものを通らないとできないんで。ちょっと頭も柔らかくなって来たんで、昔だったら絶対自分が欲しいもの中心だったんだけど、今は人が欲しいものがあって、自分がやりたいなって物はやりましたね。これは今でもいいよねっていう物と、それと全く新しい物と。

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T.B)このTシャツは日本語で「感謝する死者」って書いてますね。

YACK)それはGrateful Deadっていうのは【感謝する死者】っていう意味なんですよ。これ昔話であって、旅してた人がね、ある村にさしかかると、村人達が死んだ人を棒で叩いたり、石をぶつけたりしていたんだけど、それを見て気になった旅人が村人に聞くと、その死んだ人は大きな借金を残して死んだんだと。それで旅人は全財産をはたいて埋葬してあげるように頼んだら、その旅人が色んな旅先で救われるような経験をするんですよ。その死者が感謝をしてその旅人を見守って行くみたいな、意味合いがあるんですよ。

T.B)そんな面白いストーリーがあるんですね。DOWN ON THE CORNERのロゴはYACKさんが作られてるんですか?

YACK)それは僕じゃないんですよ。WTAPSっていうブランドやってる、当時原宿で知り合ったテツ君(西山 徹 氏)っていう人が作ってくれて。コンセプトはNew Riders(ニューライダース)っていうバンドがあって、そのバンドのアルバムジャケットにあったネタをいじってもらって。当時Macとか出始めた時代で、それ持ってる人がジョニオ君と7STARS DESIGN(セブンスターデザイン)っていうデザイン事務所が原宿にあって、そこのホリウチ君って人がMacの師匠みたいな感じで。僕もセブンスターさんと同じビルに事務所を借りてたんで、しょっちゅう、そこに行ってはMac、イラストレーター、フォトショップとかで、作ってもらって。その時色んな人に助けてもらって。その他にもギターのデザインとか、ヒロシ君(藤原 ヒロシ 氏)が作ってくれたし。ヒロシ君の家行ってね、説明するんですよ、、、テニスラケットがクロスしたロゴのスウェットが古着であって、当時それをギターでやりたいんだよって言って。そうするとパッと作ってくれたりして、、、家とか遊び行ったりしてね、「やりたいのがあるんだけど、ちょっとヒロシ君やってくれない?」って頼んで。だから当時のデザインは名前こそ出してないけど、色んな人が影で支えてくれてた。

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T.B)今後はDOWN ON THE CORNERはどういった構想があるんですか?

YACK)この頃良く使ってる言葉で、小説のタイトルとしても有名な“On the Road”って言葉があってね、それにも掛けて「On the Road again、、、もう一回またロードに出よう」っていうのも一つのテーマかな。それと“DOWN ON THE CORNER”のイメージがあるから、そのイメージを変えていくような事はしたいですよね。要するに、昔と同じ事はできるけど、やったとしても同じ風には見えない。だから、その当時とはまた違うイメージを作って行くって言うのが挑戦ですね。

T.B)今日は本当にワクワクする話しありがとうございました。本当に楽しかったです。

YACK)いやいや頑張ります。ありがとうございました。

–「On the Road again」もう一度ロードに出ようと思える本人が触れて来た時間。本場のカルチャーをライフスタイルの一部として体感したYACKさんにしかわからない感覚。洋服というフィルターを通してDOWN ON THE CORNERとYACKさんの歯車が大きく動き出し、そこから発信される、《本物の匂い》を僕はキャッチしていきたいと心から感じた時間だった・・・。

『DOWN ON THE CORNER』
http://downonthecorner1996.com

Photographer:Reika Figuigui

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