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スタイリスト 江崎 聡

免許も資格もないからこそ、持つ『こだわり』

Guest:Satoshi Ezaki

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TOKYO BASE 以下T.B)江崎さんがスタイリストになりたいと思ったのはどんなきっかけだったんですか? 

スタイリスト江崎 聡 以下 江崎)きっかけはねぇ、、、目指そうっていうきっかけは無くて。小学校時代からファッションに興味があって、初めて買ったバッシュがNIKEのAIR JORDAN 8のオリジナルを買ってからスニーカーにハマって。Boon(ブーン)世代だから、ファッション誌とか情報誌を買い漁って。自分をカッコ良く思わせるアイテムは全て欲しかった。高校にあがって、今度バイクとかに興味が出て、もちろんバイクも買って、乗ってみていじったりしました。で、地元が福岡の北九州ってところなんだけど、そこから出たくなって。もちろん地元も楽しかったし、遊んでたけど、自分の力を試したいっていうのもあって、上京しました。上京するきっかけはなんでもよかったんだけど、とりあえず、、、大学中退して、上京するきっかけの為に専門学校に入りました。それから在学中の1年生の時に、スタイリストのアシスタントの募集があったんです。そのスタイリストがやっている雑誌というのが、自分が高校から大学くらいで見てたHIPHOPファッション誌のWOOFIN'(ウーフィン)だったんです。専門学校もファッションデザインの専攻で入ったから、スタイリストっていう言葉が地方出身じゃあんまり響かなかったんですが、なんだこの仕事は、、、なんかこういう仕事あるんだなぁくらいでしか、何にも思ってなくて。WOOFIN’って言葉に惹かれてアシスタント募集があったから行ってみようっていうのがきっかけ・・・?(笑)

T.B)そこで具体的にはどんな仕事が待ち受けてたんですか?

江崎)ん~、、、なんかねぇ九十九里で、Abercrombie&Fitch(アバクロンビー&フィッチ)の撮影だったんです。アバクロが流行ってたから特集をするページの撮影でした。とりあえず居ただけかな(笑)要は雑用かな・・・。その時のスタイリストさんKatz(カッツ)さんに気に入ってもらったというか。元々Katzさんのアシスタントやってたのがうちの専門の卒業生で、その人が辞めるってことで、うちの専門学校に話しを持って来たんです。

T.B)そこからKatzさんのアシスタントに正式に決まったんですか?

江崎)うちの学校から3人行って、そこから2人に絞られて、、、最後に自分1人になって。その頃は、スタイリストはリース返却でロケバス使えて、、、スタイリストって結構良いなぁって思いました(笑)

T.B)スタイリストがバブルみたいな時ですね。その時は何歳くらいのときですか?

江崎)21か22歳くらい。

T.B)そこから何年くらいアシスタントされてたんですか?

江崎)在学中からやってたから、、、合計すると、2年半くらいかな。3年いかないくらいですね。

T.B)アシスタント時代に一番苦労した事はなんですか?

江崎)お金(笑)

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T.B)お金ですか(笑)アシスタントは給料出るんですか?

江崎)1年目は無給。そのスタイリストによっては違うけど。今の時代はお金払わないと辞めるから払ってるらしいけど。俺のときは1年目は無給で、2年目からは月1万とか2万とか。

T.B)えぇ!!その時はどういう風に生活してたんですか?

江崎) 現場のバイトですよね。工事現場の日雇い。う~ん、、、荷上げやってたなぁ・・・(笑)

T.B)無給でも続けたいなって思ったのは何かあったんですか?

江崎)意地。まぁ在学中の1年間はスタイリストの現場に行けば単位が取れたから、まぁ、、、卒業はちゃんとできたんだけど。それからは、なんでこんなキツいんかなっていう・・・。風呂入れないし。二日とか帰れないし、、、自分の要領が悪いのか、仕事の量が多いのかわからないけど。

T.B)その時はKatzさんに付きっきりって事ですか?

江崎)付きっきりっていうのと、Katzさんの知り合いのスタイリストの手伝いで他の所に行ってたり。

T.B)凄いですね、無給で(笑)逆にアシスタント時代においしい思いしたというのはあります?

江崎)地元の時聞いていた、アーティストの山嵐のスタイリングもKatzさんがしてたので、渋谷のクラブHarlem(ハーレム)に一緒に遊びに行ったら、山嵐の武史さんが居て、一緒にお酒を交わしたり。ん~あとはMACKDADDY(マックダディ)っていうブランドが地元に居たとき好きだったから、リース行ったとき、デザイナーの日下部さんだったり、BINGOさんとか、そういう地元の時に雑誌で見てた人達に会えるっていうのとか。

T.B)あぁそういうの嬉しいですよね。アシスタントから正式なスタイリストになるには具体的にどのような事があって昇格できるんですか?

江崎)まぁ一応、Katzさんから「もういいんじゃね?」って言われるのを待つしかない。

T.B)その一言でスタイリストに昇格なんですね。その時はどんな状況なんですか?

江崎)もうKatzさん名義で俺がスタイリング組んでた時。アシスタントとして、一人で一通り仕事が出来る。リース先もある。あとは仕事が来るか来ないかだけかな。Katzさんの一言と、あとは仕事が来るかどうかで、来た時に独立かなっていう。

T.B)その一言でスタイリストへの昇格なんですね。独立して仕事はすぐ入ったんですか?

江崎)Katzさんから独立していいんじゃね?って言われたけども、借金まみれなわけで、、、無給だったから。とりあえず、それを返そう返そうでバイトに明け暮れる日々。師匠からは良いって言われたけども、とりあえず金。で、ふとした時にKatzさんから付いたきっかけでもある、WOOFIN’編集長の上木さんから電話があって、「独立したんでしょ?仕事頼んで良い?」みたいな。で話しが来てスタイリスト スタートかな。

T.B)その当時は江崎さんはHIPHOPカルチャーは好きだったんですか?

江崎)そうですね。今でも好きだけど。

T.B)そこから今のスタイルに行くきっかけは?

江崎)冒頭でも地元でバイクとか乗ってたって言ったけど、そういうのが元々好きだったし、東京に来て仕事をするにつれてやっぱ自分の趣味も多少変わってきて。そうなった時に古いものとか、ヴィンテージのハーレーとか。DERIVE(ディライブ)のヒサシとか知り合ってどんどん周りにハーレー友達が増えたり、旧車やアメ車乗ってる友達が増えてって、、、ん~HIPHOPシーンだと、スタイリスト黒川が居るから、やっぱり彼の方が知識があるし。やっぱり自分の好きな物に特化していきたいなって思って変えて行ったかなぁ、、、遊びの延長。

–江崎さんの軽快なトークで話しが盛り上がり、スタイリストへの醍醐味や普段疑問に思う事を僕は素直に質問をぶつけてみた、、、

T.B)スタイリストをやってて、一番テンションが上がった仕事はなんですか?

江崎)雑誌のスタイリングで、久保田利伸さんのかなぁ。あっ、、、でも「やったぁ」ってなったのは、去年の長瀬智也さんのスタイリング。友達から入ってからの仕事だったから嬉しかったかなぁ。先月も嬉しかったのは、女優さんのスタイリングもマネージャーが地元の友達で、そこから仕事をもらったのも嬉しかったし、、、普通は自分が提案したコーディネートが売れたとかが嬉しいんだろうけど、、、俺は繋がりで仕事ができたら一番嬉しいかな。免許も資格もない仕事だから。

T.B)繋がりからの仕事は嬉しいですね。仕事で一番気を使ってる事はなんですか?

江崎)メーカーさんは信用して貸してくれるから、それが俺の手によって売れない商品になったら困るから。当たり前だけどカッコ良くコーディネートするのが仕事なんで、逆に売れなくなるスタイリングをするのはいけないんじゃないかなって。

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T.B)スタイリングする際は江崎さんの味っていうのは入れるんですか?

江崎)あー、、、一応その、、、年々変わっていってるけど、どっちかって言うと、新しいものを追うよりは、古いスタイルが好きだから、古いのと新しいのをミックス。多分スタイリストさんは、パリコレとか、東京コレクションとかファッションショーを見に行くんだろうけど、俺は基本的に行かないんです。あんまり好きじゃない。非現実的なショー、、、着飾って、、、誰がそんなんで街中歩くんだよって。まぁそれはブランドさんの世界観を伝えるファッションショーだから、それはそれでいいんだけど。新しいモノを追うスタイリストさんはめちゃくちゃいると思うから、俺はどっちかっていうと逆の方に行って古くて、今まで大事にされて来たモノとかを、多少新しいもののエッセンスを加えてのスタイルが好きですね。

T.B)その情報源というのはやっぱり現場なんですか?

江崎)足を運んで見て回るのが好きですね。なんでこのデニムジャケットが15万するのかなって。となると、実際足を運んだあとは、調べますけどね。調べるにあたって、、、本が好きだから本を見るし、ネットの方が早いんだろうけど、頭に入るのは本かな。どっちかって言うと情報源は人かな。ブーツの事が気になったらDERIVEの店長の永田に聞きに行ったり。そのジャンルごとに詳しい人は居るから。

T.B)そのジャンルに詳しい人が周りに居るって事は凄いですよね。今、専門学校でも講師もされてる江崎さんですけど、教える際に難しい事はありますか?

江崎)一番初めの授業から言うんだけど「正解はない」と。免許も資格も無いし、、、ただ誰にも「こだわりは持った方がいいんじゃない?」って言いますね。例えば、企画をやる際に知識がある方に仕事は必ず振られるし。誰にも負けないこだわりだったり、知識だったり。なんでもいいんですけど、仕事が来て、ある程度のスタイリングが誰でも出来ることだから、それ以上にその仕事を続けるんだったら、もうマニアになるくらい詳しくなってないと。裏方だろうけど、プレゼンの授業が多いですね。人に喋るっていうのが一番大切だから。初めの方はプレゼンだらけですね。何でもいいから自分の好きな物を一個調べて来てって。一人一人の知識をみんなの知識にしていこうと。で、それを来週までにみんなに良く伝えるにはどういう資料を集めてきた方がいいのかっていうのを考える。人にどう伝えるか?人前で話すってことを練習させます。でも、これはスタイリストに限った事ではなくてどんな仕事でも言える事かな。ただ、スタイリストにどう繋がるかっていうと、自分が組んだコーディネートを人前でプレゼンしなきゃいけないから。「今日の衣装はこれです。なんかかわいくないですか?なんかかっこよくないですか?」じゃ伝わらないでしょ?「これが今流行のトップスで、これに合わせるんだったら、これの色合いだったりシルエットがかわいいので、着てください」っていう一言二言がないと納得させられないというか。「なんとなく」とか「なんか」は伝わらないので言わないでって言ってます。偉そうに言ってます(笑)

T.B)自分が学生時代と今の教えてる学生達は見てて違いますか?

江崎)自分の学生時代は、、、教える立場になって思うんだけど、授業なんて行ってないし、友達と遊ぶ、原宿に行く、洋服に触れる。今年のアウターどれ買おうか。みたいな一着5万、6万するようなのを選んでた時代だけど。今の子はとりあえずファストファッションだよね。あとは、洋服屋に行かない。

T.B)行かないんですか?(笑)それはなんでですか?

江崎)本当に行かない(笑)まぁお金がないんじゃないですかね。毎週一回の授業で、初めに聞くのが「先週洋服屋行った?」って聞くけど「はい!行きました!地元のショッピングモール行きました!」「おぉ、、、そうか行かないよりはいいわな・・・」って(笑)街中歩いてるだけでも勉強になるんだから、その自分がどう取り入れるかを意識するのが大事かなって。ウィンドウショッピングでいいわけで。渋谷でもセレクトショップが並んでるんだから、ディスプレイになってるのは、そこの店が打ち出したいものだったり、流行のモノが並んでるんだから違うよって。スタイリストは流行を聞かれるから、今年は何が来るんですか?ってそういう引き出しがなければ、仕事は来ないですからね。授業中よく言うのが、俺が雑誌社だったらお前には仕事はあげないよって。まあ、そんなに怒らないですけどね。怒るのもめんどくさいから(笑)真面目に授業来てくれる子や聞いてる子は教えたくなりますよ。まあ、人それぞれですね。スタイリストも。無口でセンスがいいスタイリストも居るし、おしゃべりでセンスがないけどコネクションがあるスタイリストも居るし。俺はどっちかっていうと、人に会いに行くっていうので、仕事は取れてる方かな。

Photographer:Reika Figuigui

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