COLLECTION

ACUOD by CHANU

ACUOD by CHANU

”繋ぐ”そして”開く”

Guest:Chanu & Takuya Shimo

ジネスだけでなく、やっぱりファッションは楽しむべきだろう

T.B)今回の東京コレクションに参加するまでにはどんな経緯があったんですか?

チャヌ)2年生までは学校の事を真面目にやってたんですけど、3年生になってからもうちょっと学んだ事を応用した事やりたいなと。基礎は結構固めたと思ったから・・・日本はファッションのコンテストは結構多くて、それをメインに目指してたんですよ。

下尾)色んなコンテストに作品を出してたんですよね。

チャヌ)2015年の東京新人デザイナーファッション大賞のアマチュア部門の秀作賞を獲って、イタリアのLINEAPELLE(リネアペレ)っていうコンテストも出しました。その辺から色んなデザイナーさんとかも関わり始めて、外の世界に目覚めて。

下尾)イタリアのリネアペレではアジア人で唯一ファイナルに残って、世界で2番目の準グランプリを受賞して、その辺から色んな賞で実績を作ったんです。

チャヌ)3年の頃からそのコンテストとか、他のデザイナーの展示会とかファッションショーがあるときに、色々ショーを見てて、あーやっぱり自分でやりたいなって。負けない自信があるのに(笑)その時からやりたいと思ってて、丁度タイミング良く2016年の4月のJFW、IFFと合同展示会も出させてもらう事が出来て、5月に原宿でフロアショーみたいな個人展示会をやりました。モデルも友達から集めて。演出家とかいないから、自分でサインして歩かせて、知り合いのDJさん呼んで音楽流してもらって。

下尾)その、5月の原宿のショップの一画を借りて開いた、展示会且つ、ショーっていうか、インスタレーションっぽい感じでやったのが、“ACUOD”っていうブランドにしてから、初めての展示会でした。

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T.B)その時はチャヌさん一人でやられてたんですね。チャヌさんと下尾さんがタッグを組んだのはどんなきっかけだったんですか?

下尾)僕の大学時代からの友人で、Motohiro Tanji(モトヒロタンジ)君っていう前シーズンの東京コレクションに出していたデザイナーが引き合わせてくれました。ある時、タンジ君と一緒に色んな展示会に行ってる時に、「今日ちょっとうちの生徒連れてっていい?」って連絡があったんですよ。そのタンジ君の開いていたニット教室の生徒がチャヌ君でしたね。それで、チャヌ君に会った時に着てた服を見て「それどこの?」って言ったら「僕が作りました」って言って。結構クオリティがちゃんとしているなと。「そかそか、服作ってるんだ、頑張ってねー」って言ってその時は別れたんですけど、その後、5月のチャヌ君の展示会のお知らせが来てて。僕の学生時代は、イベントがたくさんあって、盛り上がっていた時代で。僕の主催したイベントで色んなブランドがショーをやったり、学生の頃から動く人が結構いたんですよ。Motohiro Tanjiの丹治君もそうだし、ANREALAGEの森永君とか、ケイスケカンダの神田さんとか。でも最近は、学生時代からショーとか展示会とかやるガツガツした若い人にあまり出会わなかったので、チャヌ君の展示会に行って、純粋に応援してるんで、「なんか困った事があったら言ってくださいね、なんでも手伝うよ!」って言ってたんですね。そしたら東京コレクションに決まりそうだって時に、「東京コレクション出たいです。ショーとかやる時に何かできませんか?」って相談があって。最初、演出家とか紹介しようかなって思って、断ったんですけど(笑)断ったというか、僕じゃなくて、他の人で出来ると思うんでって。

チャヌ)卓也さんが断ったのも、僕のデビューショーじゃないですか。大事な時に自分が迷惑になるかもしれないって思ってたんだと。

下尾)予算の事とか、あまりわからない事もあったので・・・でも凄い熱意があったので、出来る事はやろうと言う事で。応援しようと思った一番の動機は、チャヌ君がクリエーションにはかなり前のめりでガツガツいくんですけど、この謙虚な人柄というか。その絶妙なバランスに好感を持っていたので(笑)チャヌ君も顔が広いんですけど、みんな応援したくなるっていうそういうキャラなんで、僕もその内の一人として最初は応援しようって気持ちから始めたんですけど、話しを聞いてるうちに学生っていうのもあって予算が無いな、普通のやり方じゃキツいなと思って。僕は結構いろんなところを渡り歩いてきていて、人脈を総動員してクオリティを落とさずになるべく低コストでやれるなって思ったんです。僕が協力し易いなというか、逆に僕以外だったら他じゃ厳しいだろうなって思って、やる事にしたって所もありました。

–そして僕は今回デビューを飾った、東京コレクションの裏話に話題を振ってみた

T.B)今回の東京コレクションまではどんなスケジュールだったんですか?

下尾)実際に出ることが決まったのは8月入ってからだったんですね。ショーは10月だと。正式な日程もファッションウィーク側が判断するという事もあって、明確に決まってなかったんですけど、恐らく初日くらいだろうと。そこまでに全部決めなければいけない。通常だったら色んな業者さんに振ってやりますが、そんな予算もない。今のファッションショーは、演出家がいて、その人が演出プランを考えて、かつ本番では舞台監督も兼ねていることが多いんです。ただ舞台や芝居の世界ではそうではない。僕は演出プランも、舞台監督もできるけど、予算がないからスポンサーも持ってこないといけないし、これは一人で何役分もやらないと回らないなと思ったんです。もちろんブレーンも居たんですけど、僕しか顔を知らないスポンサーの方もいらっしゃったので、本番当日は僕自身がアテンドもしなくてはいけなかったんです。だから、ショー当日もリハーサルまで僕がマイクで仕切って演出面を確認して、本番だけ舞台監督に任せて、僕はスポンサー対応をやったり、諸々動けるようにしてました。日程がタイトだからチャヌくんにはクリエイティブに集中してもらう必要があったので、演出、プロデュース、ディレクション、プレス、セールス、メディアの対応の調整など、すべて僕が関わることになっていました。

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チャヌ)僕も作業で寝れなくて、卓也さんも複数の仕事を同時進行でやってて寝れないので、栄養ドリンク飲んでなんとか凌ぐ日が続きましたね(笑)本当に今回のショーは周りの方の協力があって実現できたショーだったことを実感しました。始めはメールでのやり取りでダメだった時も、実際に会いに行って熱意を伝えてなんとか動いていただいて。

下尾)最初はスタイリストさんやヘアメイクさんも集めて、コンセプトを理解していただかないといけなかったので、僕の信頼出来る近い人達を揃えたんです。舞台監督は奥田君というんですけど、彼は僕が10年ほど前にイベントをやってた時のブレーンで。奥田君は元KENZOのパターンナーで、しかも高田賢三さんが居た頃のパターンナーという異色の舞台監督で。なのでファッションの事もかなり詳しいんですね。そういう人たちを集めまして。今回ダンサーさんもブレイクダンスの世界チャンピオンだったんですけど、The FLOORRIORZ(フローリアーズ)とALL AREA(オールエリア)の合同チームで。ツテを辿ったり、共通の知人から繋がっていってと、、、色んな出会いに恵まれて実現できたショーでした。一人一人に会って状況を伝えて、一生懸命お願いをしてまわりました。予算の問題もあったので、あらゆる人達に会ってクリエイションに対する想いを伝えて、説明をして、その想いに乗ってくれた人達が今回関わってくれたんです。こんな時代でも、人の目を見てプレゼンして、前のめりで熱意を伝えれば、響く人がいるんだなっていうのが本当にわかったショーで、色んな人の協力がなかったら成り立たなかったショーだったんです。モデルさんとかも奇跡の出会いで実現したショーでしたね。スポンサーも然り。YKKさんもサンコロナ小田さんもSUPERGA(スペルガ)さんも、ヘアウィッグの岡本商会さんも色んなご縁で繋がり、本当に感謝しています。

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T.B)今回のショーはとてもエンターテイメント性を感じて、モデルの方々も個性が豊かだと感じました。

チャヌ)モデル選びではバックボーンのある人を選んだんです。すごい素敵な人でも、その人のカルチャーとか、持っているものがACUODとフィットしないと一緒にできなかったりとか。ACODOは性差がないことも特徴としているから男性は中性的に、女性は強めの人を選出したんです。

T.B)なるほど今回の東京コレクションのテーマはお二人で決めたんですか?

下尾)元々チャヌ君がシャツをメインテーマで勝負したいっていうのは言っていて。

チャヌ)自分の中でシャツやMA-1、コートに自信を持っていて、最初のショーでは一番自信のアイテムで勝負でしたかったから、S/Sだったのでシャツで勝負したいと思ったんです。僕は色んな中でシャツが一番美しいアイテムだと思っているんです。シャツは19世紀から今までずっとあるアイテムで、ただデザインとして作られた訳ではなくて、風や日差しから体を守る為に機能性を持った上に作られた完璧なデザインだから美しい。だから今回ショーにだした襟のドレスも、台襟だけで究極の美しさを表現しようと思って。

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チャヌ)元々はコンテストに出した作品だったんですが、今回のショーのためにスタイリングを変えてイメージを変えました。シャツの襟が350個集まってできているんですが、あれも24人で8人ずつ3チームに分けてローテーション組んで1日作り続けて2ヶ月かかったという作品です。今回のテーマは”ASSIMILATE ALL INTO SHIRTS(すべての要素をシャツと同化させる)“。様々な要素をシャツと同化させ、ストリートでの気品を表現しました。アクセサリーもパンツも体ではなく、いちばん美しいと思っているシャツに同化させて。だから、YKKさん達も、ショーと展示会を観ていただいた時に、ただデザインとして使われたと思ったのに、デザインだけで使ったファスナーが一本も無いからびっくりしてました。全て機能性を持った上で使ってくれているって。

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T.B)ファスナーの機能を最大限活かしてたんですね。このブランド名の由来は何でしょうか。

下尾)「ACUOD」を説明すると、日本語の”同化”のアルファベット“DOUCA”を逆にしているんですね。同化を逆にしてるので、逆の意味の”異化”っていう意味があります。異なる物を取り込んで、新たな物に昇華させるっていう意味の同化と、日常的で見慣れた題材を異質な物に変化させる異化。ヒップホップカルチャーが元々あったのでサンプリングというかミックスして、ストリート、モード、メンズ、レディースの色んな垣根を取っ払って、新しい価値観に変えていくよっていう想いが込められています。ブランドの特徴として、ジップ使いが特徴なんですけど、YKKさんの最高級のエクセラという物しか使ってないんです。何故ジップを使うかっていうのが、勿論、装飾的な意味も、機能的な意味もあるんですけど、さっき言ったサンプリング的なカルチャーとして、新しいカルチャーを”繋ぐ”とか、異質な物を繋げて新しい時代”開く”ということを象徴する雑食性みたいな事もありますし、アティチュードを表す象徴のツールとして使っているという感じですね。で、今回のテーマはシャツを使って、色んな物が同化するっていう。

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T.B)じゃあ、今後もACUODとしてはジップは取り入れていくんですね。

チャヌ)はい。ジップはこのブランドのデザインの中で必ず取り入れていくものですね。

T.B)では最後に、今後こんなショーを目指すとか何か野望はありますか?

チャヌ)これからは、世界に目を向けて色んな所を目指していきたいですけど、ショーを目指すというよりも、ブランドを継続させて軸を作っていきたい。ショーは目的ではなくて手段だから、そこがメインじゃなくて、ブランドのファンのお客さんが居て、作品を評価してくれればそれが一番いいです。元々最初ショーに出ようと思ったのも、自分が東京からファッション界を盛り上げようと思ったから出たので。一番は、純粋にファッションが好きでやっている想いが強くてそこが原点なので、ファッションはビジネスだけでなく、やっぱりファッションを楽しむべきだろうというメッセージを僕は投げかけていきたいです。僕にとってファッションはライフスタイル全てなので、これからも色んな人に感謝しながら、全力で前に進んで行こうと思っています。

T.B)今後の活躍を期待してます!ありがとうございました。

チャヌ、下尾)ありがとうございました。

チャヌさんの熱意に巻き込まれて同化していく人達。その人達がチャヌ君の為に繋がり、新しい時代を開く。ACUODというブランドは様々な人達と巻き込み同化と異化を繰り返し、チャヌさんのメッセージを世界に発信し続けてくれると僕は二人と話して感じた。

Photographer:Yuya Mochizuki

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