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yoshidakeisuke

スタイリスト 吉田圭佑

僕はカメレオンの様に仕事やってるだけなんで。

Guest : Keisuke Yoshida

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TOKYO BASE 以下T.B)吉田さんがまずファッションに触れたのはどんなきっかけだったんですか?

スタイリスト 吉田圭佑 以下 吉田)元々はファッションに興味なくて、中学くらいまで、「なんでもいいや~」って思ってたんですけど、高校に入って仲良くしてた子が高校で一番お洒落な子で、RAF SIMONS(ラフシモンズ)着たりとか結構高いお洒落な服ばっかり着てて、なんでそんな金持ってるのかなって(笑)MEN’S NON-NO(メンズノンノ)に出てる、そのまんまの服装とかしてて。そっからですかね、ファッションに興味持ち始めたのは(笑)

T.B)当時はどんなブランド着てたんですか?(笑)

吉田)僕も、そいつに見習って結構高いブランドに手を出しては、金無くて、、、みたいな(笑)

T.B)地元はどちらなんですか?

吉田)神戸ですね。

T.B)神戸ではどの辺で買い物をされてたんですか?

吉田)当時、baudelair(ボードレー) っていうセレクトショップが神戸ではイケてて、最先端のハイブランドをいっぱい置いてて。お洒落な人はみんなそこに買いに行くって感じでした。

T.B)じゃあ高校の時は通いまくってたんですね(笑)

吉田)そうです。VIA BUS STOP(ヴィアバスストップ)とかも神戸にあって、高校生には到底買えないようなものばっかりなんですけど、、、お金貯めて買って(笑)

T.B)大変ですね。その当時からスタイリストになろうっていうのは考えてたんですか?

吉田)僕進学校に行ってて、大学行ったんですけど、、、でも高校の時からスタイリストになりたいなって思ってましたね。

T.B)スタイリストになろうって思ったきっかけは何だったんですか?

吉田)そうですね。まさにメンズノンノを見てその当時は、野口強(のぐちつよし)さん佑真朋樹(すけざねともき)さんがドーンって出てて、インタビューとかも出てて。「なんだこの人達!?」って見てたらスタイリストって書いてあって。「こんな職業あるんだ!めっちゃ目立ってる!」って思って(笑)自分の私物とかバンバン載せてるんですよ、紙面で。その当時はそういう企画が多かったから。

T.B)やっぱり雑誌から入ったんですね。

吉田)雑誌から入ってましたね。その時代は雑誌だったんで。

T.B)じゃあメンズノンノをメインで見てたんですか?

吉田)色々と見てましたけど、メンズノンノは結構見てましたね。

T.B)大学は地元に行かれたんですか?

吉田)そうですね、大阪の大学に。文化服装とか行きたかったんですけど、ちょっとお金が高いのと、両親が「ちょっと待て!」と。「服飾の仕事をしても先はないぞ!」って(笑)。「一回4年生大学に行って、視野を広げてそれでもやりたかったらいいんじゃないの?」って言われて「あっなるほど」って思って。そこから4年普通の大学の法学部を通ってました。色んな学部の中でも法学って役立ちそうじゃ無いですか?(笑)だから法学部で学ぼうと思って学んだんですけど、やっぱりファッションがやりたくて。

T.B)じゃあ大学を卒業して専門学校に行かれたんですか?

吉田)いや、専門学校通わずに、大学卒業したら一気に東京に来て、専門学校通わずにいきなりアシスタントになろうとしたんですよ。今考えるとちょっと無謀なんですけど(笑)

T.B)凄いですね。(笑)東京にツテはあったんですか?

吉田)ツテがないんで、このスタイリストさんに付きたいって人探して。まぁ、、、結構アクティブに電話してたりしてましたね。

T.B)へぇ~凄い!アポイントとって「やらしてください!」って、、、?

吉田)そうですね。「○○さんのアシスタントに付きたいです!」みたいな。でもやっぱりスタイリストやってる人は皆そんな感じで動いてますね。そうやって動いてる人がアシスタントになってスタイリストにもなってます。

T.B)じゃあすんなりアシスタント決まったんですか?そのアポイント作戦で(笑)

吉田)すんなり決まったんですけども、僕、、、あんまり誰にも言ってないんですけど、すんなり決まった最初の方は結構暴力が酷くて、3ヶ月くらいで辞めたんですよ。そこで前歯を失って、下唇にマヒが残りました(笑)。そっから1年くらいフリーターをしながら、今の師匠、小倉正裕(おぐらまさひろ)さんについて、っていう感じなんですよね。だからすんなりではないですね。

T.B)その時は吉田さんは何歳くらいの時でしたか?

吉田)24歳ですかね。

T.B)小倉さんと出会ってアシスタント生活が始まったと思うんですけど、一番大変だった事はなんですか?

吉田)寝れないのが一番大変でしたね。あとお金がないのが(笑)

T.B)やっぱり無給だったんですか?(笑)

吉田)無給、、、無休無給ですね(笑)だから夜中にバイトとかしてました。本当に寝れてなかったんで、、、その当時は過労死するなって思ってましたね。(笑)ただ、その分メンタルや度胸は据わりました。今の時代根性論とかあまり歓迎されないのかもしれないけど、独立して仕事する上で大事なことだから、普通じゃ得られないことだと思うので感謝しています。当時は苦しかったけど(笑)

T.B)壮絶ですね、、、(笑)アシスタントの時の初めての仕事は覚えてますか?

吉田)確か、、、411(フォーダブワン)の撮影ですね。正式に迎え入れられてやったのがその現場です。デニムの物撮りだったんですけど、いきなりスタジオ行かされて、何をどうしたらいいかわからなくて(笑)戸惑ったのは覚えてます(笑)「えっ、物撮りってどうするんですか?」みたいな(笑)

T.B)そうですよね。いきなり業界用語すらわからないですもんね。

吉田)師匠も居てくれるのかなって思ったら、途中でどっか行っちゃって僕だけになっちゃったんで(笑)一人で汗ダーってかきながら、やったのは凄い覚えてますね。でもカメラマンさんとか他のスタッフがみんな優しく教えてくれましたね。

T.B)スタイリストさんのアシスタントって大変ですね。

吉田)そうですね。ん~、、、意志の弱い人にはオススメしないですね(笑)

T.B)やってる時は葛藤ってなかったんですか?

吉田)僕はあんまり無かったんですよね。調べてる時に過酷っていうのはいろんな所から聞いてたんで。これは覚悟しておかないといけないんだなって思ってたんで。腹括ってて。だからあんまりギャップっていうのはなかったですね。やってて、楽しかったですね。

――軽快な関西弁と人柄が滲み出る笑顔で話しをしてくれる吉田さん。僕はアシタント時代からスタイリスト独立の話しへ話しを進めた、、、

T.B)アシスタントはどれくらいやられてたんですか?

吉田)僕は4年ですね。結構みんなバラバラで2年で終わる人も居れば10年の人も居て。その間にまぁ2ndのアシスタントとかも付いてて。当時めちゃくちゃ忙しくて、毎日撮影してたんですよ。僕ともう一人のアシスタントの子と上手く回してたんですけど、、、そのアシスタントの子が体調を崩しちゃってボロボロになって「もう辞めたい」って辞めちゃったんですよ。僕も見てて「この子ダメだ。体壊すわぁ」って思って、もう辞めていいよって師匠も言ってて辞めたんですよ。僕一人になっても仕事量は変わらないですけど、逆に燃えてめちゃくちゃ頑張ってやってたんですよ。それで続けてたら、ちょうど4年くらいの時に師匠が「そろそろ独立したら?」って言ってくれたんですよ。僕も「えっ!?」ってビックリしたんですけど。僕も10年くらいやらされると思ってたんで(笑)

T.B)独立の話は唐突に言われるんですか?

吉田)唐突に言われたんで、びっくりしたんですけど、後々思えば、僕がめっちゃ動いてるのを回りのスタッフが見てて「独立させてあげたら?」って言ってたんじゃないかな?って。今となってはちょっと思うんですよね。

T.B)なるほど。それでフリーのスタイリストになられたんですね。そこからすぐに仕事は入ったんですか?

吉田)すぐ入りました(笑)4年間ギャラ無しだったんで、当時借金まみれだったんですよ。仕事がしたくてしたくて、ウズウズしてたんで、「独立していいよ」って言われた次の日から関係者の皆様に営業メール打って「独立したんで」って。そしたらすぐに仕事が入ったんですよね(笑)

T.B)その当時は一人暮らししながらですよね?

吉田)家賃も滞納した事もありますし、電気が止まった事もありますし。結構色んな人にお金借りたり、当時付き合ってた彼女にお金借りたり、、、色々上手くやってましたね。

T.B)結構大変ですね。みなさんスタイリストのアシスタントさんはそこがネックって言われてますよね。

吉田)そこはネック、、、多分、今の時代はやれないですよね。若い子は。

T.B)お金払わないとすぐ辞めて行っちゃったり。

吉田)そうですね。でもその方がいいんですよね。皆がそうしてると、払わなきゃいけないことが当たり前になるから。あの当時は払わないのが当たり前だったんで。

T.B)確かにそうですね。吉田さんがスタイリストさんになって初めての仕事は覚えてますか?

吉田)覚えてますよ。もう今無くなっちゃったんですけど、双葉社から出てたEDGE STYLE(エッジスタイル)っていうレディースの雑誌の仕事ですね。

T.B)レディースなんですね。小倉さんのアシスタントの時もレディースやられてたんですか?

吉田)レディースもありましたね。メンズもレディース両方やってたんで。

T.B)今は吉田さんは雑誌がメインなんですか?

吉田)雑誌メインですね。雑誌以外だと、、、雑誌から派生して、アーティストさんのスタイリングだったり、あと最近は声優さんのスタイリングとかもやってたり。結構幅広くやってますね。

T.B)じゃあメインでやってるのはどんな雑誌なんですか?

吉田)前までは、WOOFIN'(ウーフィン)とか411とかをレギュラーでやってたんですけど、最近ちょっと変わってきてて、mini(ミニ)とかsmart(スマート)とかその辺をやってて、ちょっとジャンルが変わってきてますね。

T.B)男性がレディースをスタイリングするのはやっぱり難しいんですか?

吉田)難しいですね。レディースのスタイリングは楽しいですけど、難しい。実際に着てないじゃないですか、メンズは色んな服装してきたからわかるけど、レディースは着た事ないんで、スタイリングしててリアルじゃないなって思う事ありますね。着た事ないのに、なんでスタイリングしてるんだろうって。

T.B) あぁ~そうか。そうですね。わからないですもんね。スタイリングする時、吉田さんの味、テイストとか入れたりするんですか?

吉田) 僕は自分の好きな洋服はあまり載せないんですよ。言うても仕事じゃないですか。雑誌の読者が反応しやすそうな物しか載せない様にしてて。それが最終的に編集の人もコイツわかってるなってなりますしね。

T.B)じゃあ雑誌の企画に合わせたスタイリングっていう。

吉田)雑誌の企画に合わせたり、変な話し、、、その担当の編集の人がSTUSSY(ステューシー)が好きなら今回STUSSY借りようって。仕事目線でやってるんで。とは言っても僕がリースしてるんで、味は出てるのかもしれないですね。僕自身は味を出そうとしてないんですけど、僕がチョイスした洋服の中で出てるのかもしれないです。よく、仕事していると「吉田君のスタイリングはこんな感じだよね」って言われるんですけど、僕自身はわからないんですよ。その雑誌に合わせてやってるんで。だからそれがもしかしたら味なのかな。ただ僕はカメレオンの様に仕事やってますね。レディースはレディースで。メンズはメンズでみたいな。

T.B)多種多様に合わせていくんですね。仕事をしている中でテンションが上がった仕事、印象に残った仕事ってありますか?

吉田) テンションがあがった仕事は、個人的にラップグループでSCARS(スカーズ)のSEEDA(シーダ)さんが、上京してきた時から好きで聴いてたんですけど、当時、EMIの知り合いの人から「SEEDAのジャケットとPVのスタイリングお願いしたいんですけど。」って言われたときはブチ上がりましたね。

T.B)憧れの人と一緒に仕事が出来るっていうのはこの仕事の醍醐味ですよね。他には印象深い企画とかありますか?

吉田)WOOFIN’で企画がめちゃくちゃ細かい時期があってめちゃくちゃ大変な時期で、徹夜が毎月続いてて。ブランドも多い時100件くらい借りてて。

T.B)そういったときはスタジオに籠りっきりなんですか?

吉田)当時は中野坂上に住んでて、自宅で作業してたんですよ。スタジオで撮影するんですけど、スタジオは時間が限られてるんで、撮影が終わったら自宅で作業してました。段ボールが100個届くから部屋の中が凄い事になってて。送りのリースとか、段ボールで届けられても100件分あるんで、それは目に焼き付いてますね。

T.B)凄いな、、、(笑)スタイリストさんは結構細かい作業多いですよね?

吉田)そうですね。服借りて、撮影して、返すっていう単純作業なんですけど、前準備とか後作業で。

T.B)タグ切りとかアイロン作業とかもですよね?

吉田)タグも、元場所に付けなきゃいけないんで、タグ切ったら脇に付いてたとか、付いてた所をメモ書きしなきゃいけないんで。タグ切るにも結構細かい作業がありますね。だから皆さんが思ってる以上に細かくて、結構大変ですね。

T.B)僕らのイメージだと、スタイリストさんって華やかな所に居て、華やかな仕事をして、華やかに仕事が終わるっていうイメージですけど、結構大変ですね(笑)

吉田)華やか1割、9割は地味、、、孤独っすね(笑)

T.B)孤独かぁ、、、吉田さんがスタイリストを辞めようと思った事ありますか?

吉田)えっとですねぇ~、、、「無い」と言いたいんですけど、もしかしたらあったのかもしれないですね、アシスタントの頃に、何回か。

T.B)でも、それを超える何かがあったから今も続けている?

吉田)そうですね。基本的に僕見栄っ張りなんで、地元の子らに「スタイリストなる、なるー!」って言ってきたんで、今更辞められないなって。見栄で乗り越えてきましたね。あとまぁ、、、アシスタント2年目くらいになると辞められないと思いましたね。2年も頑張ってきたんだから、絶対独立してやろうと思ってましたから。

T.B)吉田さんにとってスタイリストってなんですか?

吉田)僕にとってスタイリストはあくまでも仕事ですね。仕事でやってるんで、仕事です。生活のため。やりたい事を仕事にしたいと思ってたんで。それ以上でもそれ以下でもないです。

T.B)クールですね。今後スタイリスト通じてこういった仕事をしたいとか、こういう風にしていきたいとかありますか?

吉田)あんまりないんですけども、ハイブランドのハイファッションの雑誌ってあんまりやってないんで、そっち方面もオジさんになってやれたらいいなって思ってます。ブランドでも雑誌でも。一番は雑誌ですけど。

T.B)いいですね。色んな方面に活躍していく、、、今日はありがとうございました。

吉田)ありがとうございます。

「僕はカメレオンの様に仕事やってるだけなんで。」この言葉で、自身を表現する吉田さん。クールな表現だけど、自分の好きな事を仕事にしたからこそ話せることだと思う。そんなスタイリストという職への向き合い方について話を聞いて、吉田さんのスタイリングが男女問わず支持されるのも頷けた時間だった。

吉田圭佑tumblr
http://stkeisukeyoshida.tumblr.com/

Photographer:Reika Figuigui

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